住民税を払い忘れていた。
転職のゴタゴタで、普通徴収に切り替えられていた事をすっかり忘れていたのだ。
半年分くらいまとめて払った。
高い。
いや、もちろん払わなければならないものなので払うのだが、まとめて払うと改めて「高いなあ」と思う。
そんなことを思いながら、僕は最近、ゴミステーションを買おうとしている。
今年は自治会の班長をやっている。
班長をやっていると、当然ながら細々とした仕事が降ってくる。その一つがゴミ集積所のカラス対策だった。
今のところ、ゴミをネットで覆っているのだが、これがどうにも限界に近い。
実際、「ネットでは限界なので対策して欲しい」という要望が住民から届いた。確かに今年は酷かった。通勤時にゴミ捨て場の前を通るたびに「うわあ」と思うような状態の日もあった。
カラスが荒らすというより、ネットの隙間や重しの甘さを突かれている感じで、もはや防御というより“気休め”に近い。
もう少しちゃんとしたゴミステーションを置けないか。
利用しているのは十数世帯である。
市にも電話した。
そのときの回答が、妙に印象に残っている。
「ゴミ捨て場は市の土地です。そこにステーション設置の許可を求められると、正直ハイとは言えません。ただ、みなさんステーションを置かれている所は多いですね。察して下さい」
という、かなりわかりやすい回答だった。
要するに「ダメとは言わないが、公式には許可できない。でも現実的にはみんなやっている」というやつである。
それなら買うか、となる。
製品も調べた。
利用している世帯に意見を聞くため、アンケートも作った。
ここが少し悩ましいところだった。
まず、回答の匿名性は担保したい。あくまで「誰がどう思っているか」を気にせず書ける形にしたい。
一方で、班長である僕としては、誰が回答したかは少なくとも把握しておきたい。未回答の世帯がどこかも追えるようにしておきたいからだ。
さらに問題なのは、各世帯がどれくらいITツールを使ってくれるか全くわからないことだった。Googleフォームを投げても誰も見ない可能性が普通にある。
そんなわけで、説明文と各世帯用の回答シートを回覧板に混ぜ込んで流した。
紙である。
各世帯ごとに回答用紙を分けておき、そこに記入してもらう。ただし提出時には名前を書かなくてもいい形にして、匿名性は保つ。
その代わり、どの世帯に配ったかは僕が把握しているので、未回収の管理はできる。
提出先は我が家のポストにした。
ゴミ捨て場を普段使う世帯が対象だ。つまりみんな徒歩圏内である。
わざわざオンラインにする理由もない。
これが一番安くて簡単だと思います。
こういうのもシステム設計ではあると思う。
結果として、賛成が多数だった。
ただ、予想していた通り、反対意見も少しあった。
その中に、
「自作してはどうか」
という意見があった。
気持ちはわかる。
既製品は高いのだ。
僕が候補にしているステンレス製のゴミステーションは10万円以上する。
箱である。
ゴミを入れる箱に10万円。
自分で作れば、もっと安くできそうな気はする。
では、作るか。
ここから急に面倒になる。
木工で作るのか。
鉄工するのか。
百均あたりで材料を揃えて DIY するのか。
僕に鉄工の技術はないが、まあ、それは何とかするとしよう。
問題はその先である。
例えば木で作ったとして、屋外に何年置けるのだろう。
雨にも濡れる。
数年経って木が割れたり、ササクレができたりするかもしれない。腐るかもしれない。
白アリなんて出たら目も当てられない。
そのとき、誰が直すのか。
僕が班長なのは今年だけである。
作るところまでは何とかしたとしても、3年後、5年後の修繕まで僕が面倒を見るのか。それとも、そのときの班長に「これは自治会で自作したものなので直してください」と引き継ぐのか。
考えることはいろいろある。
面倒くさい。
そう考えると、10万円以上する既製品もそんなに高くない。
十数世帯全員が賛成すれば、一世帯あたり8000円くらいである。
耐用年数が15年から20年なら、ざっくり一年400円から500円。
それで、設計しなくていい。
材料を選ばなくていい。
加工しなくていい。
数年後に木が腐る心配もしなくていい。
10万円というのは、ステンレスの箱そのものだけではなく、こういう「考えなくていいこと」に払う金でもあるのだろう。
ただし、ここにはもう一つ問題がある。
参加しない自由もある。
ゴミステーションを買うことに反対して、お金を払わなかったからといって、その家だけゴミ捨て場を使えなくするわけにはいかない。
いわゆるフリーライダーである。
もちろん、仕方ない。使えなくしたとしたら、その家のゴミがカラスの餌になるだけだ。それではゴミステーションの意味がない。
誰が賛成して、誰が反対したかを僕は知っているが、そんな情報を漏らすわけにもいかない。
賛成した人だけでお金を出す。
参加する世帯が多ければ一人あたりは安くなる。
少なければ高くなる。
そして完成したゴミステーションは、みんなが使う。
なんだか税金みたいな話になってきた。
だったら最初から市がゴミステーションを設置してくれればいい。
僕が市に電話する必要もない。
製品を調べる必要もない。
回覧板を作る必要もない。
アンケートを集める必要もない。
集金もしなくていい。
壊れたら市に電話すればいい。
実に楽である。
でも、市内のゴミ集積所で同じことをやろうとしたら、市はそれぞれの場所を調べ、住民と調整し、製品を選び、発注し、設置し、その後の維持管理までしなければならない。
当然、人が必要になる。
その人の給料はどこから出るのか。
税金である。
住民税を半年分まとめて払った。
転職のゴタゴタで、普通徴収に切り替えられていた事を忘れていたせいで、余計に「まとめて感」が強かった。
高かった。
これ以上高くしてほしくない。
だったら、このくらいは自分たちでやるしかない。
回覧板を回して、アンケートを取って、十数世帯で相談して、ゴミ箱を買う。
まあ、これが生活ってやつだよね。