Palantir がよくわからない。
いや、何をやっている会社なのかはなんとなく知っている。
企業のいろいろなデータを集めて、統合して、分析して、意思決定や業務に使えるようにする会社である。最近は FDE(Forward Deployed Engineer)という言葉と一緒に名前を見ることも多い。
しかし、Palantir の説明には「オントロジー」という言葉がよく出てくる。
これがよくわからない。
僕は少し前まで、自分で作っているアプリケーションにもオントロジーを導入しようとしていた。結局、役に立たなかったのでやめた。
なので、オントロジーについて考えるのは二度目である。
僕なりの理解では、オントロジーというのは「世の中に何が存在していて、それらがどういう関係にあるのか」を表現するモデルである。
例えば会社なら、顧客がいる。
契約がある。
商品がある。
注文がある。
従業員がいる。
部署がある。
「顧客が契約を結ぶ」とか、「従業員が部署に所属する」とか、そういう関係もある。
Palantir は、顧客企業のデータを単に一か所へ集めているわけではなく、それらを「これは顧客である」「これは契約である」「この契約はこの顧客のものである」という形に組み直している。
なるほど。
これ、企業のデジタルツインを作っているのでは?
と思った。
現実の会社に存在する人、物、契約、取引、設備、プロセスなどを、コンピュータの中にもう一つ作る。
もちろん現実そのものではない。
「会社をどうモデル化するか」という Palantir 側の世界観を通して作られた、会社の模型みたいなものである。
この理解が正しいなら、Palantir の強さは単にデータを統合できることではない気がする。
「企業とは何でできているのか?」というモデルを持っていることが強いのではないか。
そこで、話が変な方向へ進んだ。
では、Palantir に対抗する会社を作るとしたらどうするのだろう?
同じようにデータを集めます。
AI に分析させます。
FDE が顧客企業に入ります。
それだけでは、たぶん弱い。
Palantir と違う見方で企業をモデル化する必要があるのではないか。
つまり、自分たちなりの、
「組織とは何か?」
が必要になる。
そして顧客企業を、そのモデルに当てはめて理解する。
そのモデルを実際のデータと結びつけるためのプラットフォームがある。
その上で FDE が顧客企業へ入り、現実の業務をモデルへ写していく。
ここまで考えると、Palantir に対抗するというのは「Palantir みたいなソフトウェアを作る」という話ではなくなってくる。
Palantir とは違う企業観を作る。
そっちの方が先なのではないか。
では、僕なら企業をどうモデル化するのか。
考えてみた。
企業は承認フローでできているのではないか。
120人とか、それなりの人数を超えた会社を想像する。
何かを買う。
承認がいる。
契約する。
承認がいる。
リリースする。
承認がいる。
人を採用する。
承認がいる。
予算を使う。
承認がいる。
なぜ承認が必要なのか。
これは単に偉い人にハンコをもらう儀式ではない。
「この範囲について、あなたが判断してよい」という権限があって、その判断に伴う責任がある。
承認とは、権限と責任の委譲を要求する仕組みなのではないか。
例えば取締役会でルールが承認される。
そのルールに従って AI が業務を行う。
この場合、単に人間の仕事を自動化したというより、組織が持っていた権限の一部を AI に委譲した、と考えることもできる。
すると、企業の中を流れているものは情報やタスクだけではない。
権限と責任が流れている。
そして、その流れが詰まる場所が組織のボトルネックになる。
これはちょっと面白い。
……と思ったのだが、すぐに穴が見つかった。
取締役会はどうするのだ。
取締役会は、誰かから承認してもらって仕事をしているわけではない。
逆側もある。
言われたことをそのまま実行する末端の仕事も、必ずしも承認による権限移譲として表現する必要はない。
つまり、
「企業とは承認フローである」
は、さすがに言いすぎである。
ただ、実際にボトルネックになりやすいのは両端ではない。
組織の真ん中だ。
上から与えられた権限を使いながら、下から上がってきた判断を承認する。
自分でも判断するし、さらに上にも承認を求める。
この中間部分をモデル化する方法として、「権限と責任の委譲」という見方は案外使えるのではないか。
まだよくわからない。
昨日は Palantir が何をやっているのか知りたかっただけなのだ。
それがオントロジーの話になり、デジタルツインの話になり、Palantir に対抗するにはどうすればいいのかを考え始め、最後には「会社とは何か?」を考えていた。
Palantir のことは、まだよくわかっていない。
会社のことも、よくわかっていない。
ただ、「Palantir のようなものを作る」なら、ソフトウェアを作る前に、自分たちなりの「会社とは何か?」を決めなければならない。
そんな気がしている。