僕にはパッションもバイタリティもない。
そういう自己認識がある。
こう書くと、昔から冷めた人間だったように見えるかもしれない。
そうでもない。
大学生の頃、僕はホリエモンに憧れていた。
将来はベンチャーを起業する。
そう思って、大学まで中退した。
今から考えると、なかなかの行動力である。少なくとも今の僕にはできない。
その後、最初に潜り込んだのがソーシャルゲームのベンチャーだった。
うまくいかなかった。
それからも、いくつかのベンチャーを見た。
クラウドソーシングで日本の働き方を変える。
最高のゲームを作る。
飲食の未来を変える。
他にもいろいろあった。
そして、みんな本気だった。
別に採用サイトに書いてある綺麗なミッションの話ではない。
本当に、それをやろうとしていた。
そのために会社を作る。
そのために働く。
場合によっては、自分の人生を賭ける。
僕が若い頃に憧れていた「ベンチャー」というのは、たぶんそういう世界だった。
そして、僕はそうならなかった。
そのまま会社員になった。
もちろん、会社員が悪いわけではない。プログラマとして仕事をして、転職もして、それなりにいろいろな仕事をしてきた。
ただ、「将来はベンチャーを起業する」と言って大学を辞めた人間の行き先として見ると、ずいぶん普通のところに着地した。
夢をなくしたのだと思う。
では、今なら起業したいか。
難しい。
今は家族もいる。守るものもある。
でも、それだけでもない気がする。
仮に守るものが何もなかったとして、何かに人生を賭けられるだろうか。
たぶん、できない。
結局のところ、本気になれない自分がいる。
その挙げ句が Weekend Farm House である。
週末だけ使える小さな農園付きセカンドハウスが欲しい。
そんなことを考えた。
考えているうちに、どういう施設ならいいのか、いくらくらいなら買えるのか、どんなサービスがあったらいいのか、と話が膨らんでいった。
そしてコンセプトサイトまで作った。
普通なら、ここから「よし、事業化しよう」となるのかもしれない。
僕はサイトにこう書いた。
「誰かこれ、やってくれません?」
もはや自分で動くことすらやめて、謎の創作を始めている。
欲しいものはある。
作りたいものもある。
できることもある。
でも、この三つはなかなか重ならない。
Ikigai のベン図みたいな話である。
僕にできることはプログラミングだ。
長いこと仕事にしてきたし、システムを作るのは好きだった。
きちんとコードを書くのも好きだった。
ただ、何か一つのサービスに人生を賭けて、何年も走り続けるほどのパッションがあるかと言われると、ない。
そして、システムを作るにはバイタリティも必要だった。
何かを作ろうとすると、コードを書くだけでは済まない。
環境を作る。ライブラリを調べる。設定する。エラーを潰す。また別のエラーが出る。
本当にやりたかったことからどんどん離れて、気づけばヤックシェービングをしている。
僕はコードを書くのが好きだった。
だからこそ、コードを書き始めるまでのあれこれが辛かった。
そこに AI がやってきた。
AI がコードを書いてくれるようになった。
面倒な調査も、設定も、よくわからないエラーとの格闘も、かなり任せられるようになった。
すると、またシステムを作れるようになった。
最近、僕は自分が欲しかったツールを作っている。
別に、パッションが戻ってきたわけではない。
世界を変えたいわけでもない。
これに人生を賭けると決めたわけでもない。
バイタリティが突然湧いてきたわけでもない。
僕は相変わらず、パッションもバイタリティもない。
ただ、技術のほうが変わった。
パッションもバイタリティもない人間でも、自分が欲しいものを作れるくらいにはなった。
それならまあ、作ってみようと思う。