今日、Zenn で「AI-Slopな日本語を構造レベルで読みやすくするSkill『yomiyasu(よみやす)』を作りました」という記事を読んだ。
AI が生成した、いわゆる AI-slop な日本語を、人間にとって自然で読みやすい文章へ直すための Agent Skill らしい。
で、記事を読みながら思った。
AI-slop な文書を直すスキルは、実に無駄だと思うんだよね。
いや、yomiyasu が悪いという話ではない。むしろ、AI の文章の何が読みにくいのかをかなり真面目に分解している。
僕が引っかかったのは、その先である。
例えば記事には、AI が書いたデザインシステムの説明文を読みやすくする例がある。
元の文章には「意思決定 OS」だとか「手触り感」だとか「解像度」だとか、いかにも AI が好きそうな言葉が並んでいる。それを yomiyasu に通すと、UI パーツを共通化することで作業負担を減らす、といった具体的な説明に書き換わる。
確かに読みやすい。
でも、ここで僕は別のことが気になってしまった。
お前は誰に、なぜ、「デザインシステムは必要だ」という話をしているんだ?
もう一つ、非同期処理の例もある。
元の文章は、途中に「依存構造は分割できない。動かしながら引き返す。」みたいな、何を言っているのかよくわからない一文が入っている。
それを、冪等性やリトライ、DLQ といった具体的な実装の話に直している。
これも、書き直した後の方が圧倒的に読みやすい。
ただし、そこまで具体化すると、もはや文章を読みやすくしただけではない。
「メッセージングを用いた非同期処理における注意点」を、誰に、どのレベルで、何のために説明するのかを決めて、そのために必要な内容を書き直している。
文章の意味も、目的も、対象読者も変わっている。
初心者向け入門スパイスカレーを読みやすくしてください、と頼んだら肉豆腐定食が出てきた感じだ。
確かに食べやすい。
でも、それ別の料理じゃない?
僕は AI-slop の一番困ったところは、表現ではない気がしている。
誰に何を伝えるための文章なのかがないまま、AI に「いい感じの文書を書いて」と頼むことなんじゃないだろうか。
AI は書ける。
目的が曖昧でも書ける。
対象読者がいなくても書ける。
中身が足りなくても、それっぽく埋めて書ける。
その結果として、「重要なのは」と言い出したり、謎の比喩を始めたり、三つの箇条書きを生やしたりする。
だから、それを後から禁止語や統語構造や lint で直す。
うーん。
先に、何を書くのか決めた方が早くない?
この ayasuda.com の文章も、かなり AI に書いてもらっている。
というか、最近はほぼ全部そうである。
僕が ChatGPT と雑談する。
何か引っかかっていることを話す。
途中で「あ、俺が言いたいのこれだわ」となる。
そこから初稿を書いてもらう。
僕が読んで、違うところを直す。
この文章もそうだ。
だから AI が書いていると言えば、完全に AI が書いている。
でも、少なくとも何を書きたいかは先にある。
誰に何を説明するかというより、僕の場合は「これについて、こういうことを思った」が先にある。
そこがない状態で文章だけ生成して、あとから AI 臭を消そうとするから大変なんじゃないかと思う。
もちろん、業務文書ならもっと明確だろう。
この仕様を実装する人に、この制約を伝えたい。
この PR をレビューする人に、変更理由と影響範囲を伝えたい。
この手順を初めてやる人に、迷わず作業してほしい。
そこまで決まっていれば、AI に最初からそう書かせればいい。
それでも変な文章を出すなら直せばいいし、そのためのスキルは役に立つと思う。
でも、何のために書いているのかわからない文章を、後段で一生懸命「人間らしい文章」に直しても、たぶん根本はあまり変わらない。
AI-slop を消すのに必要なのは、AI-slop を消すスキルではない。
何を言いたいのかである。
必要なのは、気持ちだよ気持ち。パッション。
……急に一番 AI が扱いづらそうなものになってしまった。